| タマゴの殻 |
絵を描くのは実に楽しい。私は小さい頃からマンガや絵を描くのが 大好きで、小学校では絵画部に入っていた。 その頃、忘れられないのが卒業記念の作品。みんなで相談して、前年に 行われた東京オリンピックでの日本選手団入場行進を、タマゴを使った モザイク画にしようと決まった。かなり大きい作品だ。早速、全員で タマゴの殻集め。家に帰ると母に「学校でタマゴの殻要るねん。 タマゴ、タマゴ・・・」と連日、タマゴばかり食べ、それでも足りないと、 母に内緒でタマゴを割り、中身を冷蔵庫に戻して殻だけ持って登校 したこともある。 学校では毎日、タマゴの色付け、貼り付け作業。下絵の上に小さく 割った殻を貼っていくのだが、かなり根気のいる作業だ。そして作業が 進むうちにどうも下絵通りに出来ていないことに気付く。 確認してみると、後方の観客席の人物が、手前の選手よりもかなり 大きくなっていたり、色が合っていなかったり、下絵と違っている ところが何ヵ所もあった。 細かい作業が得意だった私は、「自分は下絵通りにちゃんとやってるの に・・」と不満であった。それでも何とか仕上がった我々の労作は、 学校の講堂に飾られることになる。 誰からも良く見えるようにと、高いところに掛けられたモザイク画を 見た時、私は驚いた。作業中にあれほど気になった人物の大きさや色の 違いなどがまったくわからないのだ。離れてみる大きな作品は、特に絵の 構図やバランスが大切で、細かい部分の描き方やいろの違いなどは、 まさに‘小さいこと”なのである。絵全体からとても良い雰囲気が 出ていた卒業記念のこの作品は、私に絵の面白さを教えてくれた作品 でもあった。 また、このことは、私たちの舞台にもいえることで、1人1人が きめ細やかな演技をすれば芝居が面白くなるわけではない。 さまざまな大きさや色の演技、表現が混然一体となったとき、 そこに立体感のある舞台が生れるのだと思う。 ところで、私はいまでも細かく描き込む絵が好きだ。人形も・・・・・。 桐竹勘十郎 |
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